中村健太 『おいしそうなティッシュホルダー』
¥800($5.06)
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僕のことを知っている人からは、「えっ、写真集じゃなくて歌集なの?」と驚かれる。
確かに短歌を作っていることはあまり発信していないし、始めてまだ2年足らずなので、結びつかないのも無理はない。
ただ僕自身、自分とかけ離れた新しいことを始めた感覚はあまりない。だって写真と短歌って似てるんだもの。映像より似ていると思う。
例えば、あっと感情が動くような光景に出くわしたとする。映像だと、どうしても構成まで考えなければならない。でも写真や短歌なら、1秒にも満たないあわいの出来事や感覚を、ZIPファイルに圧縮するように閉じ込めることができる。
どうやら僕は、日々のエピソードトークにもならないような「取るに足らないこと」や「くだらないこと」が、どうしようもなく好きみたいだ。
日記のように、そのときの感情を書き残したいわけではない。その瞬間に起きたことや目にしたものを、小さなログとして打ち続けたい。
そうして点のように残した記録をあとから眺めると、自分でも気づいていなかった流れや輪郭が浮かび上がってくる。
写真と短歌は、そんな記録の仕方ができるところが、すごく僕の体に合っている。
前置きがスゲー長くなってしまったが、最後に一首と、そのときの状況を紹介したい。
定食屋
着物の子ども
キーホルダー
忘れて壁に
皆で見守る
行きつけの定食屋に行くと、壁に忘れ物のキーホルダーが掛けられていた。
そこには七五三の着物を着た子どもが写っている。忘れたのは親だろうか。それとも祖父母かな。
忘れ主に目につくよう壁へ掛けられたキーホルダーを、お客さんも「あら、早く気づくといいね」と気にかける。
店にいる誰もその子を知らないのに、写真の中の子どもは、その場のみんなに見守られているように見えた。
─POPEYE web magagin 本人執筆より─
2026年5月31日 初版発行
著者 中村健太
発行 がっぷりよつ出版
応援 株式会社ロブジェ
撮影 中村健太
装釘 山本梨央
編集 柳下恭平
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