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矢島陽介 『NEW MARGIN』

¥3,300($20.86)

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New Marginがもたらすもの

矢島陽介の作品は無表情だ。被写体の建造物、人物、静物画。どれもが孤立して存在しているようにみえる。時代の雰囲気や日々の生活から生じる孤独、誰と共にいてもふと我にかえり覚める瞬間が喚起される。しかし次々に作品をみつづけ、また時間をおいてみかえすと、それらから浮かび上がる孤独感は、ざわざわした空気に包まれる社会の中で擦り切れた心に、ちょっとした安心感をもたらす。何かが確かに存在した痕跡、何かによって影響を受けた形跡、手繰り寄せるかもしれないほんの少しの服の弛み、気がつかない程度の髪の揺れ。意味を掴みとれない淡々とした片隅の風景、顔/表情のないポートレイトを繰り返しみることで、孤独を抱えているのは自分だけではないという安堵感に似たものを感じ、微かな変化が起きる。

どんなに孤独と対抗し克服しようとしても、社会と切り離せない自己という存在だからこそ悩みは尽きず、自然環境や社会情勢、他者は絶え間なく個人へ影響を与え続ける。個人差はあるだろうが、例えばコロナ禍以降、一見、平常化し利便性が高まった日々の生活のなかで、SNSにおける「いいね」に翻弄されたり、会社/組織は自分を必要としているのだろうかと悶々と悩んでAIへ相談することが増えていないだろうか。または自分は承認要求が低いので悩みは少ないと思っている人が、他者から評価を迫られ閉口する機会もあるだろう。

タイトル「New Margin」とは「新しい余白、端、周縁部」の意である、と作家はいう。では、中心とは何/どこなのだろうか。家族・親族が中心だという人も、自分という存在を支えている趣味や、大学や会社、友人などの所属組織で潮流を操っている人達が中心だと思う人もいるだろう。いずれにしても考えているのは自分自身なのだから、自身の意識が中心だという考え方もある。New Margin – これらの作品は、これまで自分が無意識につくってきた枠組に新たな余白を与え、外側からの視点で自身をみつめかえし、自身にとって許容できる最端を確認、もしくは拡張する契機になるかもしれない。

丹羽晴美、学芸員

─本書より─

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