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『ESCAPE』 箕輪麻紀子/MAKIKO MINOWA

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雑誌、広告、書籍装画などを中心に活躍中のイラストレーター、箕輪麻紀子による作品集。

本作には、ボルボ240、キャデラックエルドラド、日産パオ、ダットサンフェアレディ、トヨタクラウンなど、名車から大衆車まで、古今東西の車のある風景を描いた作品を収録しています。

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免許をとったばかりの18歳の夏、父親の車を借りて、友人たちと夜の海へ向かった。砂浜で花火に興じ、車の中で語らいながら、朝日が昇るのを待った。水平線が光に照らされたとき、少しだけ自分が大人になった気がした。

20世紀、大衆車の普及によって私たちの日常は大きく変化した。それは、私たちを時刻表から解放し(来るかどうかわからないバスを待ったり、電車の出発時間に併せて行動を制約されることもない)、身体能力を超えた移動を可能にした(まだ見ぬ景色を求めて、何十倍もの速さで)。

“It helps me from being alone late at night”
“I’ve got the world, got the turnpike”
from “Roadrunner” by Jonathan Richman

車という力強い相棒が可能にしてくれたのは、“ここ”からのエスケープ。その気になれば、どこへでも行ける。ミラー越しに、通り過ぎた風景を見やる。置いてきた過去の自分を振りほどくように、アクセルを踏む。

箕輪麻紀子が描いた様々な国や時代の車のある風景は、人と車のいくつもの物語を想起させる。彼らはどこへ行くのか、どこから戻って来たのか。ぴかぴかに磨かれた車もあれば、走れば十分、とでもいうようなボロボロの車もある。定められた行き先を持たず彷徨ったり、夜中に恋人のもとへ超特急で駆け付けたり、自由を手に入れた男たちもいれば、自分の意志とは関係なく変わっていく車窓の景色を不満気に眺める少女もいる。

今日では、AIの技術を利用した自動運転システムが実用化に向けて進められ、さらに空飛ぶ自動車の研究も進んでいるという。私たちが自分でハンドルを握る自動車の時代は終わりに近づいている。それが現実のものとなれば、車と私たちの関係は今とは全く違ったものになるのだろう。ここに描かれたような“車のある風景”が記憶や物語の中を住処にするようになるのは、そんなに遠いことではないのかもしれない。

ELVIS PRESS

(あとがきより)
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148mm × 210mm 60 pages, hardcover, offset print
1st Edition of 1000
Publication date: October 2018

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